Drink more coffee.

くろくてにがいのみものナリ。

+小辭林のこと

一年ほど前に、時々遊びに行く古道具屋さんで

古い小辭林を見つけた。

発行は昭和三年。

手のひらにほどよく収まる大きさと、

今となっては非常に読みにくい旧仮名遣いが気に入った。

先日ふと思い出して「珈琲」の単語を調べてみたが掲載されておらず。

あら残念。

念のため「コーヒー」とか「こおひい」なども探してみたがやはり無し。

それならばと「喫茶店」の頁を探す。

ちなみに「きっちゃてん」で載っていた。

どれどれ。

「茶菓を供する輕便なる店」だそうだ。

なんて簡潔。確かにそうだが、説明はこれだけ。

「輕便」てなんだ?

「てがるにして便利なること」

なるほど。

必要最低限の内容で書かれているこの辞典。

最後の単語は「をんな」で締めくくられる。

【小辭林 終】と書かれた最終頁を何気なくめくって、私は少し驚いた。

そこにはわざわざ1ページを割いて歌が記載されていた。

 

春の花のあした、秋の月のゆふべ、おもひをのべ、

心をうごかさずといふことなし、

ある時には糸竹のしらべをととのへ、

ある時には大和もろこしの歌ことばをあらそふ、

敷島のみちのさかりにおこりて、

心の泉古よりも深く、

辭の林昔よりもしげし

千載和歌集序)

 

この小辭林がこんなに美しく豊かであったことを

私は今の今まで、知らなかった。

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